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注目された「認知症列車事故」の最高裁判決。家族の責任は?

「認知症」列車事故の背景と争点

注目された「認知症列車事故」の最高裁判決。家族の責任は?
事故は、当時91歳の男性が無施錠だったフェンスを開けて東海道本線の線路内に進入し、その結果列車にはねられて死亡したというものです。この事故によってJR東海は遅延などの対応を迫られ、大きな打撃を受けました。それに対し、名古屋地方裁判所に損害賠償(719万7740円)を求めて遺族を提訴したのです。
ここまではごく普通の流れなのですが、問題は死亡した男性が重度のアルツハイマー病だったという点です。つまり意図的に線路に飛び込んだのでなはなく、病気によって徘徊し、不本意に事故に遭ってしまったということを遺族は主張します。
ただ、JR東海は遺族が目を離した隙に徘徊してしまい事故に遭遇したので、しっかりと見張っていれば事故は発生しなかったと主張します。アルツハイマーという病気だから仕方のないことだったのか、それともJR東海の主張のように防げた事故だったのかという点が争点です。

一審判決と二審判決の内容は?

一審判決は死亡男性が重度のアルツハイマー病により判断能力を失っていたことは認められましたが、同時に遺族には監督する義務があったと共に、それを怠ったと判断されました。結果はJR東海の請求額の全額を支払うことを、介護方針を主導していた長男と注意義務を怠った男性の妻に命じました。
二審判決では一審判決と内容が少し変わり、長男の責任は認めずに男性の妻だけの責任だという判決になりました。介護方針を主導したのは長男でしたが、同じ屋根の下で暮らしていた訳ではなく、事故のことはまさに寝耳に水という状況でした。
しかし、男性の妻は一緒に暮らしており、男性はアルツハイマー病であり十分に監視しておかなければならない状況なのにも関わらず、目を離した隙に徘徊に至ってしまいました。男性の妻も要介護1の身障者ではありましたが、監視能力は持ち合わせていたとして、二審判決では責任を認定されました。

最高裁の判断は?

最高裁は、家族には賠償責任はないとし、遺族側の逆転勝訴という結果に終わりました。二審判決までは、監視する義務があり、その能力を持ち合わせていながらそれを怠って徘徊させた責任は大きいと判断されていました。しかし、最高裁で逆転勝訴した要因としては、一瞬目を離した隙に出て行ってしまったことがポイントとなりました。
男性の妻も一人の人間ですから、トイレにも行きたくなりますし眠気を催すこともあります。にも関わらず一瞬も目を離さずに監視することは到底不可能なことだという判断に至ったのです。もし一瞬も目を離さないことが正しい監視方法であるとするのであれば負担が大きくなり、過酷な生活を強いられるという主張も認められました。
それだけでなく、結果的に防げませんでしたがデイサービスを利用する見守り体制を組むなどして、徘徊などの問題行動を阻止する手段をとっていたことも責任がないと判断された一つの要因となりました。

認知症介護の家族の注意点は?

この事故は結果的に最高裁で遺族側が逆転勝訴しましたが、一審や二審では窮地に立たされていたのは紛れもない事実です。この点から、認知症による徘徊は病気だから仕方がないという認識は甘いとも考えられます。判例から認知症患者の家族ができることとして、第一に事故が発生しないように見守り体制を強化すること、事故が発生してもしっかりと対策は講じたと主張できるような状態にしておかなければなりません。
人による監視はどうしても隙ができてしまうので物理的に徘徊を防ぐ手立てを考えなければいけません。ドアや窓に、扉が開かないように徘徊防止用の鍵を取り付けることが有効な手段となります。もし認知症患者が破壊して徘徊してしまったとしても、対策を講じているので責任を追及される可能性は低くなります。
ただ、狭い部屋に閉じ込めるなどをすると、やり方によっては監禁となってしまう可能性もあるので、注意しなければいけません。
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